長崎県の島原ではフグのことを“がんば”と呼びます。呼び名の由来は、江戸時代に猛毒を持つフグを、当時の藩主食ベることを禁じる「フグ食の禁令」を出したときに、それでも危険をかえりみずおいしいフグを食べる人が後を絶たなかったそうです。そのことから「棺(ガン)ば(を)そばに用意してでも食べたい」食という意味で、フグをがんばと呼ぶようになったといわれています。
五島灘やその周辺にいるトラフグは、3月から5月にかけて有明海まで産卵にやってきます。島原湾はその季節がフグ漁の最盛期で、そのトラフグを使ったものが「がんば料理」です。とても美味しいため、近年では天然ものだけでなく、養殖トラフグや有明海産ナシフグも登場するようになってきました。
がんばを使った島原独特の郷土料理のひとつに“がねだき”があります。ぶつ切りにしたがんばを火にかけ、から炒りをして水気を切っておき、醤油、酒、またはみりんで味をつけて(砂糖は不使用)、旬の野菜(たけのこなど)と梅干し、ニンニクの葉を加えて煮汁がなくなるまで煮込んだものです。風味と香りが絶品でご飯が進みます。
他にも、多少厚めにそぎ切りにしたがんばの身に薄塩をして、熱湯にさっとくぐらせて冷水にとり、梅干しを添えた身を醤油、酒、酢で作ったタレともみじおろしなどの薬味などで食べる“湯引き”も珍味として食されています。
旬 3月 4月 5月