長崎県の五島列島で作り続けられてきた手延うどんは「幻の五島うどん」と呼ばれている。たっぷりのお湯でゆで上げたあつあつのうどんをしょうゆやあご(トビウオ)だしのたれで食べる「地獄炊き」が地元では定番。 地獄炊きの名は、初めて食べた旅人が「しごくおいしい」とほめたのが、地獄おいしいと聞き間違えたのが、この言葉の由来であるというユニークな説も。
1000年以上の歴史を持つ五島うどん!その背景に納得
椿油を用いる麺はモチモチの食感、コシの強さ、喉ごしのよさが特徴。大きな鍋で茹でて、熱々のまま食卓へ運び、醤油と生卵を絡ませて食べる「地獄炊き」が有名。
五島列島には麺づくりに必要となるミネラル豊富な「塩」があり、のばし作業の際に麺がくっつかないようにするための「椿油」の原料となる椿が多く自生していたことから、長きに渡り作り続けられている。
「五島うどん」は、長崎県の最西端にある五島列島の古くからの特産品。
かつて五島は遣唐使船の寄港地であったことから、中国でさまざまなことを学んだ遣唐使がその原型を伝えたといわれている。近年の研究においては、製法が酷似している中国・浙江省永嘉県岩坦(せっこうしょうえいかけんがんたん)地区に伝わる索麺(そうめん)がルーツではないかという説がでている。
五島に多くある製麺所で作られるうどんは、地元では、家庭料理としてだけでなく、大勢の人が鍋を囲んで食べる行事食としても親しまれてきた。全国的に名物うどんとして知られるようになってからは、日本各地のさまざまな家庭、シーンで食されるものとなった。現在、製麺の約80%は島外に出荷されている。
地元での定番の食べ方は「地獄炊き」。乾麺を鉄鍋でぐつぐつとうゆでて戻し、それを五島沖で獲れたトビウオを使ったアゴだしでいただく。味にアクセントをつけるために、ネギ、かつお節、しょうゆを入れて溶いた卵に麺を絡めて食べることもある。うどんを取り出す時に箸では取りにくいので「うどんすくい棒」を使う。
主な伝承地域:五島列島
主な使用食材:〈地獄炊きにする場合〉五島うどん、薬味(ネギ、しょうが、かつお節)、卵